<コラム>美食國1位は中國でない?「外國の美食が理解できない」ことから學べる教訓

大串 富史    2020年12月31日(木) 20時10分

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近所に開店した回転壽司形式の火鍋店。中國の火鍋は日本の鍋料理のようでは決してなく、むしろ日本のしゃぶしゃぶに近い。一般的な火鍋のスープは中國人であれば絶対飲まず、必ず捨てる。

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世界三大料理(英:The Three Grand Cuisines)がフランス料理、トルコ料理、そして中國料理と言われて久しいとはいえ、「【クックドア】世界へ貢獻してきた世界三大料理!」というコラムにもある通り、近年はイタリア料理や日本料理の臺頭も顕著な美食の世界。

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では結(jié)局のところ、美食國1位は一體どこの國なのか。意外にも、それは中國ではないらしい。

というのも、「外國人が選ぶ10大美食國、1位は中國ではなかった!=中國ネット『外國人には美食が理解できない』『中國の飲食文化と比べたら外國は原始時代』|レコードチャイナ」という記事によれば、「外國人が選んだ美食國家は、1位から順に、1.イタリア、2.中國、3.フランス、4.スペイン、5.日本、6.インド、7.ギリシャ、8.タイ、9.メキシコ、10.米國という結(jié)果になった」からだ。

これは當然、中國の人々にとって面白くない。「この結(jié)果に対し、中國のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた」そうだが、その中のコメントの一つが、今回コラムのテーマにもなっている。

すなわち、「外國人には美食が何かを理解できない」。

これを言い換えると「外國人には中國の美食を理解できない(中國人には理解できる)」となる。だがそれは同時に「中國人には外國の美食が理解できない(外國人には理解できる)」ということにもなろう。

もっとも僕は、この記事をもって中國の人々や中國の美食を貶めるつもりは毛頭ない。その逆だ。

結(jié)論を先に述べるなら、中國には美食が多過ぎる。だから外國の美食は不要なのである。同時に中國料理は中國人に訴求するための探求の所産であって、外國人の口にも合う味などというベクトルが働いていない。

まず、中國には美食が多過ぎる。

もちろん日本にも美食があり、B-1グランプリよろしく「B級ご當?shù)廿哎毳帷工蛞护囊护膾い菠皮い胜?、日本の「美食」は?shù)知れない。

だから日本に比べ人口が10倍で面積が25倍の中國の「B級ご當?shù)廿哎毳帷工味喾N多様さが日本の比でないことは、容易にお察しいただけよう。

「B級ご當?shù)廿哎毳帷工坤堡扦悉胜?。中國料理は家常菜つまり家庭料理そのものが多種多様である。

日本の家庭料理である肉じゃがや味噌汁がダメダメだというわけでは決してないが、中國の家庭料理は日本に比べ種類がずっと多い。しかもその多くが日本料理に欠かせないダシや味噌をほとんど、または全く使わない。

たとえば地三鮮。じゃがいもとピーマンと茄子を多めの油を使って強火で炒めるという、本當にただそれだけの料理なのに、三種類の野菜を組み合わせただけでこんな味になるのかと驚かされる。玉ねぎも肉もダシも、もし手に入らなければ香辛料さえ不要なのに、である。

試しに今度肉じゃがを作ったら、騙されたと思って最後に炒めたピーマンと茄子の天ぷらを添えてみるといい。

定番中の定番の魚香肉絲(ユーシャンロース)にしても宮保鶏?。ē偿螗啸俩`ティン:鶏肉のカシューナッツ炒め)にしても同様で、中國料理に見られる素材や香辛料やその両方の組み合わせの妙は、中國料理の真骨頂といえる。

遠い昔に秦の始皇帝が練丹術(shù)師たちに不老不死の霊薬を見つけるよう要求したような、あるいは現(xiàn)代中國の漢方醫(yī)が百子櫃つまり床から天井まで屆く薬だんすを使って種々様々な漢方薬を処方するような,そんな官民揃っての探求があんな大きな國で數(shù)千年続いているわけだから、美食についても當然そうなろう。

結(jié)果的に、中國の人たちにとって外國の美食は不要となる。

これは日本人の僕個人の私見ではない。中國在住の外國人に聞けばすぐ明らかになる。つまり、中國では外國の美食やそのバリエーションが庶民の食生活に外國ほどには浸透していない。

もっと分かりやすく言うと、中國で外國の美食を提供するレストランは珍しく、外國の美食が家庭で作られることもまれで、外國の美食の食材もスーパーにはない。

たとえば中國で筑前煮を作ろうとすると、ゴボウが入手しにくくて困る。北京にいた時はなんとか手に入ったのに(それでいつも韓國人と間違われていたのだが)、ここ青島ではなかなか手に入らない。日本人の僕になじみ深いあのゴボウの味が、中國では數(shù)千年の取捨選択の末に忘れ去られてしまったようにも見える。

ちなみにバジルや生チーズ(クリームチーズ)を手に入れようとしても同様である。それはあたかも中國の人々が、そんなのより香菜(コリアンダー)や腐乳(豆腐を発酵させた中國の伝統(tǒng)的食品で「豆腐チーズ」とも呼ばれる)のほうが全然美味しいよ!と言っているかのようだ。

そんなわけで、中國料理には外國人の口にも合う味などというベクトルが働いていない。

たとえば日本の皆さんもご存知かもしれない「火鍋」はどうか。

皆さんが日本の中華街や中華料理店で食べたことのある「火鍋」が「日本人の口にも合う味」だったなら、その「火鍋」は日本向けにローカライズされていた可能性がある。

たとえば「火鍋のスープも美味しかった」のであれば、それは中國の僕らが知る一般的な火鍋ではない。中國の火鍋は日本の鍋料理のようでは決してなく、むしろ日本のしゃぶしゃぶに近いからだ。一般的な火鍋のスープは中國人であれば絶対飲まず、必ず捨てる。

だから「日本でも大ブームになった『火鍋』の魅力に迫る! | 橫浜中華街世界チャンピオンの肉まん皇朝」という記事などで「肉や魚介類、野菜などを、ダシが効いたスープに入れてゴトゴト煮こむ」などと書かれてしまうと、いやいや、その「火鍋」は(この文章の描寫も含め)日本でご営業(yè)中の皆様が日本向けにローカライズしたものですよね?!などとツッコミを入れたくなってしまう。

その証拠に、先日も日本語のオンライン多人數(shù)レッスンの時に中國各地の中國人の生徒たちから「ここに出てくる『鍋』って何ですか?火鍋?」という質(zhì)問があり説明したところ、「へー、スープも飲める火鍋なんですね!」と盛り上がった。

もう、お気付きになられただろう。中國料理というのは、あくまでも中國人にとっての美食なのだ。だから「火鍋」一つとっても、日本人が喜びそうな「スープも飲める火鍋」などというものは、昔も今もこれから先も中國では流行りそうもない。

ところで最近、小學校に上がったばかりの娘にせがまれて、近所に開店した回転壽司形式の火鍋店に家族で足を運んだ。

僕の中國人の妻は火鍋が大好きだし、僕の娘も中國で育ったハーフだから火鍋が大好きだし、僕も中國人と結(jié)婚し中國に長期滯在中の半分中國人な日本人だから火鍋が好きである。早めに著いた僕らが食べ終わった頃には、店は人でごった返していた。

つまり中國の僕らにとって、美食國1位は當然ながら中國である。冬の火鍋などは最高だ。

とはいえ中國人の妻と、ハーフの娘の「中國人」な部分と、半分中國人な僕の「中國人」な部分を除外した、「外國人が選んだ美食國家」は中國なのかと言えば、ちょっと微妙である。

端的、もし火鍋並みにリーズナブルなのであれば、僕はもちろんハーフの娘も必勝客(中國でマクドナルド並みに知られているピザハットの中國名で、中國ではイタリアンレストランとしてピザやスパゲッティ等を出す)またはホテルレストランのランチビュッフェ(イタリア料理を含め西洋料理がある)を選ぶだろう。

いやそれより、もし仮にこの火鍋店がこのまま日本にワープして開業(yè)したら一體どうなるか。

世界ランク2位の中國料理の冬の風物詩?本場中國の火鍋(しかも回転壽司形式で最新トレンドにかなうオシャレな火鍋店)ではあるが、先にご紹介した「スープも飲める火鍋」店には當然かなわないだろうし、それ以前に世界ランク5位の日本料理の強豪店らにコテンパンにのされてしまうだろう。

では、中國人が「外國の美食が理解できない」ことから學べる教訓とは何か。

実のところ、日本人の僕らは「火鍋」を含め、中國の美食を本當には理解できていない。これは敷衍すれば、日本人の僕らは、外國の美食を本當には理解できていない。

もっと分かりやすい言い方をすれば、僕らがこよなく愛する日本料理の面々は僕らにとってあんなに美味しいのに、そのまま世界に飛び立てば、メダルどころか世界ランク5位の烙印を押されて帰國せざるを得なくなる。

僕は以前、ここ中國に日本料理店が數(shù)えるほどしかなく、あったとしても(豚骨ラーメン以外は)本場または本場に近い日本料理を出す日本料理店に出會ったためしがないことを少々不満に思っていた。だが今はむしろ、インバウンドという視點から日本料理と日本の皆さんのことを心配している。

僕たち日本人こそ、「外國人には美食が何かを理解できない」などと言っている場合ではない。

■筆者プロフィール:大串 富史

本業(yè)はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中國?北京に8年間、中國?青島に3年間滯在。中國人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留學を旨とする「長城中國語」にて中國語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中國?中國人?中國語學習?中國ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執(zhí)筆中。

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