拡大
最近、「グローバルサウス」なる言葉が、はやり言葉のように使われるようになっている。寫真はインド。
最近、「グローバルサウス」なる言葉が、はやり言葉のように使われるようになっている。その定義はまだないものの、これまでの「開発途上國(guó)」や「第三世界」というのと大なり小なり変わらない模様だ。それなら、なぜこの言葉があちらこちらで使われるようになっているのだろうか?
グローバルサウスとは、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカの地域に含まれる開発途上國(guó)や新興國(guó)の総稱とみられる。先進(jìn)國(guó)を意味するグローバルノースあるいはグローバルウエストに対比する呼び方であろう。一方にアメリカなどの西側(cè)先進(jìn)國(guó)があり、他方に中國(guó)およびロシアという権威主義國(guó)が存在する現(xiàn)在の世界にあって、両者のあいだに位置する國(guó)々は、経済的、社會(huì)的な発展が北半球の先進(jìn)國(guó)に比べて遅れ、しかも大半が南半球に屬するので、グローバルサウスと呼ぶようになっていると思われる。
インドが、今年1月におよそ125カ國(guó)からの參加を得て「グローバルサウスの聲」というオンライン?サミットを主催した。同サミットには中國(guó)は參加しておらず、岸田総理も國(guó)會(huì)答弁で、このグループに言及する際には、中國(guó)を含めていないと発言している。これまで、中國(guó)は開発途上國(guó)の多くを自國(guó)陣営に取り込もうと外交努力を重ねてきたが、もはや中國(guó)は世界第二位の経済大國(guó)だ。急速に臺(tái)頭するインドのほうこそが、このグローバルサウスのリーダー格ないしは代弁者と見てよいのであろうか?
中國(guó)とインドのどちらがグローバルサウスのリーダーといえるかと、最近話題の「チャットGPT」に聞いてみると、「それは、それぞれの視點(diǎn)によって異なります」という、きわめて優(yōu)等生的なものだった。経済面では中國(guó)がその経済力の大きさや影響力のためリーダーとされることが多いものの、政治や文化面ではインドがその英語(yǔ)発言力、民主主義などから大きな影響力を持っており、総じて、両國(guó)ともグローバルサウスにおいて重要な役割を果たしているとの回答であった。
グローバルサウスという言葉が使われ出すまでは、「開発途上國(guó)」あるいは「発展途上國(guó)」という言葉がよく使われていた?,F(xiàn)在も、外務(wù)省や他の役所の文書などで使っていると思われるが、「開発途上國(guó)」あるいは「発展途上國(guó)」にも、國(guó)際的に厳格な定義があったわけではない。先進(jìn)國(guó)でない國(guó)々を、そう呼んできたにすぎない?!弗ⅴ弗ⅰ工味xに似ている。アジアというのは、元來(lái)、ヨーロッパではない地域のことを指していたので、厳密な定義はなく、文脈によってアジアという地域に含める國(guó)は変化する。例えば、アジア競(jìng)技大會(huì)には、イラン、クエートやカタールなども參加している。
それでは、「先進(jìn)國(guó)」というのには定義があるのだろうか?実は、それもない。普通よく使われる尺度は、金持ち國(guó)のクラブと言われるOECD(経済協(xié)力開発機(jī)構(gòu))の加盟國(guó)だ。ヨーロッパ諸國(guó)を中心に、日、米を含め、現(xiàn)在38カ國(guó)がこのOECDの加盟國(guó)となっている。しかし、このOECDの加盟國(guó)よりも経済的に豊かな國(guó)がいくつかある。トルコはOECDの原加盟國(guó)だが、その経済レベルは比較的に低い。日本もOECD加盟國(guó)だが、日本よりも一人當(dāng)たり國(guó)內(nèi)総生産(GDP)が高くて、OECD加盟國(guó)でないのは、シンガポール、カタール、アラブ首長(zhǎng)國(guó)連合だ。それでは、これらの國(guó)は先進(jìn)國(guó)と呼んでよいのだろうか?
「開発途上國(guó)」という言葉を使う時(shí)によく使われる基準(zhǔn)が、OECDが発表している政府開発援助(ODA)の受け取り國(guó)リストだ。最新のリスト(2022-23年)を見ると、2020年時(shí)點(diǎn)の一人當(dāng)たり國(guó)民総所得(GNI)が12695ドル以下の國(guó)々、合計(jì)141カ國(guó)がリストアップされている。國(guó)連によって「後発開発途上國(guó)(LDC)」と分類された46カ國(guó)(アフガニスタン、カンボジア、ネパールなど)に加えて、世銀の分類による「低所得國(guó)」2カ國(guó)(北朝鮮、シリア)、「下位中所得國(guó)」36カ國(guó)(エジプト、インド、ウクライナ、インドネシア、ベトナムなど)、および「上位中所得國(guó)」57カ國(guó)(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、コスタリカ、中國(guó)、マレイシア、モルドバ、タイ、南ア、トルコなど)だ。上位中所得國(guó)のうち、メキシコ、コロンビア、コスタリカとトルコは、現(xiàn)在OECD加盟國(guó)である。
このような基準(zhǔn)に従えば、世界第二位の経済大國(guó)中國(guó)は、まだ途上國(guó)のグループに屬すると言える。他方、シンガポールは屬しない。しかし、話はさらに複雑になるが、國(guó)連には、1964年に発足した途上國(guó)と新興國(guó)による「G77プラス中國(guó)」という交渉グループが存在する。気候変動(dòng)など様々な交渉で、途上國(guó)を代表する交渉グループだが、目下134カ國(guó)を抱え、この中には、中國(guó)、インドはもちろん、なんと日本よりも金持ちのシンガポール、カタール、アラブ首長(zhǎng)國(guó)連邦もメンバーになっている。
國(guó)連での交渉、特に環(huán)境に関する交渉では、途上國(guó)が錦の旗とする原則がある。1992年のリオサミットで決まった環(huán)境と開発に関するリオ宣言の第7原則「共通だが差異のある責(zé)任」だ。地球環(huán)境の悪化は、すべての國(guó)に共通の責(zé)任があるものの、先進(jìn)諸國(guó)の長(zhǎng)年にわたる経済発展の仕方にこそ主たる責(zé)任があるとして、先進(jìn)諸國(guó)は、開発途上國(guó)よりも差異のある、重い責(zé)任を有するという原則だ。気候変動(dòng)のみならず、あらゆる環(huán)境関連の條約交渉で、途上國(guó)側(cè)はこの原則を盾に、義務(wù)的な約束は先進(jìn)國(guó)と若干の経済移行國(guó)に押し付け、途上國(guó)が義務(wù)を課されることは斷固拒否してきた。このように、途上國(guó)グループに屬するということは、大変大きなメリットがある。
さらに話は一層複雑化するが、世界貿(mào)易機(jī)関(WTO)には、途上國(guó)優(yōu)遇制度がある。そこでは、どの國(guó)が途上國(guó)であるかは、加盟時(shí)の自己申告に任されている。その結(jié)果、現(xiàn)在164のWTO加盟國(guó)中、約3分の2が、「途上國(guó)」を自稱している。中國(guó)、インド、カタール、アラブ首長(zhǎng)國(guó)連邦といった國(guó)々が、「途上國(guó)」として大手を振っている。これに業(yè)を煮やした米國(guó)は、2019年に一定の卒業(yè)基準(zhǔn)を提案した。その提案は、OECD加盟國(guó)、G20メンバー、世銀の「高所得國(guó)」、世界貿(mào)易シェア0.5%以上の4つの要素を基準(zhǔn)に、いずれかに該當(dāng)すれば途上國(guó)待遇から卒業(yè)させようというものだ。しかし、いまだまとまっておらず、わずかに、臺(tái)灣、ブラジル、シンガポール及び韓國(guó)の4カ國(guó)のみが、卒業(yè)に応じる宣言をしているにすぎない。
筆者がOECDに勤務(wù)していた時(shí)期(2003年から07年まで)、東南アジアでは、タイとインドネシア、それにマレーシアが、近い將來(lái)のOECD加盟に多大の関心を寄せた。特にタイは、當(dāng)時(shí)のタクシン首相が2020年までのOECD入りを目指していたのだが、2006年に彼が退陣を余儀なくされたあと、OECD入りの件は頓挫した。なお、シンガポールは、特別に脆弱な都市國(guó)家などという理由と、先進(jìn)國(guó)扱いされることのメリットを見出さないからか、OECDへの加盟には関心を示さなかった。そろそろ、これら東南アジア諸國(guó)のいくつかの國(guó)も、OECDに加盟して、名実ともに「先進(jìn)國(guó)」を名乗ってもよい時(shí)期が近づいていると思われる。
以上のような様々な視點(diǎn)から見てみると、これまでの「先進(jìn)國(guó)」対「途上國(guó)」という伝統(tǒng)的な構(gòu)図や、國(guó)連での交渉グループとしての先進(jìn)國(guó)グループ対途上國(guó)グループたる「G77プラス中國(guó)」という構(gòu)図も、現(xiàn)実とはかなり食い違っているのがわかる。國(guó)連の環(huán)境交渉やWTOでは、常に、途上國(guó)の扱いが厄介な問(wèn)題となってきた。象や虎のように大きな中國(guó)やインドが、「自國(guó)は途上國(guó)だ」といって、ネズミみたいに小さな他の國(guó)と同様に、優(yōu)遇措置や差別待遇を要求してきた。米國(guó)などは、「ネズミの後ろに象が隠れている」と歯に衣著せぬ言い方で、このような狀況を批判してきた。
グローバルサウスという言葉がはやり言葉になった一因は、途上國(guó)がもはや一枚巖ではなく、その中で、経済大國(guó)や、非常にリッチな國(guó)々と、まだまだ貧しい國(guó)々との格差が広がっており、すべてを「開発途上國(guó)」というくくりではとらえ難くなっていることがあげられよう。その実態(tài)をオブラートで包み隠すため、「グローバルサウス」という言葉は、曖昧ではあるものの、新鮮味があり、使いやすい新語(yǔ)とみなされるようになったのではないだろうか?特に、インドのように臺(tái)頭著しい新興國(guó)にとっては、便利な言葉なのだろう。「開発途上國(guó)」だと主張してきたいくつかの國(guó)々が、実際上はだんだんと先進(jìn)國(guó)を上回る経済レベルをおう歌するようになっているように、このグローバルサウスという言葉も、長(zhǎng)い歴史の中では、一過(guò)性のはやり言葉で、実體の変化とともに、そのうちに消えてなくなるのかもしれない。
このような事情で、このグローバルサウスという言葉に、何かうさん臭いにおいが感じられてならない。従來(lái)から慣れ親しんだ「先進(jìn)國(guó)」、「新興國(guó)」、「中進(jìn)國(guó)」、「開発途上國(guó)」といった言葉遣いのほうが分かりやすい気がするのだが、それだと上述のような諸問(wèn)題に直面してしまう。前述のWTOでのアメリカ提案のような、明確な基準(zhǔn)があればこれも解決できるのだが、そのためには國(guó)際的な合意が必要だ。この國(guó)際的な合意が困難なのは、早く先進(jìn)國(guó)グループに入りたいという途上國(guó)がある一方で、反対に、できるだけ長(zhǎng)く途上國(guó)グループに殘って、優(yōu)遇措置を受けていたいと思う國(guó)もあって、意見がまとまらないからである。
現(xiàn)在途上國(guó)グループに屬しているいくつかのリッチな國(guó)は、実態(tài)は先進(jìn)國(guó)並みあるいはそれ以上だけれども、分類上は先進(jìn)國(guó)と途上國(guó)との間のグレーゾーンにあるということだろうか?そして、このようなグレーゾーンにある國(guó)も、強(qiáng)いて言えば、グローバルサウスに屬しているとみるべきなのだろうか?曖昧な言葉だけに、融通無(wú)礙な使い方ができる言葉ではある。
「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結(jié)びて久しくとどまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」(方丈記)―他の國(guó)のことはいざ知らず、急速な人口減少の日本の將來(lái)も心配だ。グローバルサウスの後任の、そのまた後任のグループ名ができるような將來(lái)に、「日本もメンバーになりませんか?」という聲がかからないことを望みたい。
■筆者プロフィール:赤阪清隆
公益財(cái)団法人ニッポンドットコム理事長(zhǎng)。京都大學(xué)、ケンブリッジ大學(xué)卒。外務(wù)省國(guó)際社會(huì)協(xié)力部審議官ほか。経済協(xié)力開発機(jī)構(gòu)(OECD)事務(wù)次長(zhǎng)、國(guó)連事務(wù)次長(zhǎng)、フォーリン?プレスセンター理事長(zhǎng)等を歴任。2022年6月から現(xiàn)職。
Record Korea
2023/4/3
Record China
2023/4/3
Record China
2023/4/3
華流
2023/4/2
Record Korea
2023/4/2
Record China
2023/4/2
ピックアップ
we`re
RecordChina
この記事のコメントを見る