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中國(guó)で第3期習(xí)近平政権がスタートした。政治や外交は重要だが、現(xiàn)在の中國(guó)にとって最も重要な要因は経済問題ではないだろうか。
2020年の7月から執(zhí)筆してきたコラム執(zhí)筆も、今回で最後となった。筆者は本コラムにおいて、主に日本企業(yè)の中國(guó)ビジネスチャンスについて述べてきた。
折しも中國(guó)は、第3期の習(xí)近平政権がスタートした。政治や外交は重要だが、現(xiàn)在の中國(guó)にとって最も重要な要因は経済問題ではないだろうか。すなわち、掲げられた國(guó)家目標(biāo)に向かうためには、何よりも経済の持続的な成長(zhǎng)が必要とされるのだが、今それが少し危うくなっている。
筆者がこれまで記してきたように現(xiàn)在の中國(guó)経済には多くの課題があるが、ここでは特に重要なものを3つあげてみたい。そして筆者は、これらの課題こそが日本企業(yè)に中國(guó)ビジネスの機(jī)會(huì)をもたらしてくれるものだと考えている。
第1の課題は、先日の第14期全國(guó)人民代表大會(huì)(全人代)で習(xí)近平國(guó)家主席も言及した「経済の質(zhì)的成長(zhǎng)」である。2021年から始まっている第14次五か年計(jì)畫では、「労働生産性の増加率を?qū)g質(zhì)経済成長(zhǎng)率以上にする」という質(zhì)的成長(zhǎng)の目標(biāo)が明記されている。
中國(guó)の統(tǒng)計(jì)データによれば、近年は労働生産性の増加率が実質(zhì)GDP増加率を上回っており、中國(guó)は質(zhì)的成長(zhǎng)へと脫皮し始めていると言える。しかしもう少しミクロにみると、例えば國(guó)の基幹産業(yè)として産業(yè)をリードすることを期待されている自動(dòng)車産業(yè)においては、そのような傾向が見られない。
図1は、中國(guó)の自動(dòng)車産業(yè)の労働生産性(付加価値は粗利データで代用)の増加率の推移を示したものである。製造業(yè)全體でいえば、労働生産性は順調(diào)に増加しているのだが、こと自動(dòng)車産業(yè)に関して言えば、2020年を除けば近年はマイナス成長(zhǎng)である。
自動(dòng)車産業(yè)では、新エネルギー車生産への補(bǔ)助金が産業(yè)全體を押し上げていると思われる。しかし逆に、補(bǔ)助金目當(dāng)ての市場(chǎng)參入者が後を絶たず、業(yè)界全體が過當(dāng)競(jìng)爭(zhēng)に陥っておりそれが産業(yè)の生産性向上を阻害しているのではないかと考えられる。
第2の課題は、中國(guó)が2020年に國(guó)際公約した「2060年カーボンニュートラルの達(dá)成」である。また2020年の國(guó)連演説において習(xí)國(guó)家主席は、「2030年までにCO2排出量をピープアウトさせる」とも宣言した。
2060年はまだかなり時(shí)間があり先のことになるが、2030年はもうすぐだ。筆者の試算によると、中國(guó)は2022年から30年までの実質(zhì)GDP成長(zhǎng)率の平均が4%臺(tái)半ばを超えると、2030年までのピークアウト化は難しくなる。當(dāng)然ながら経済成長(zhǎng)は、CO2排出量を増加させるからである(図2參照)。
ところが、先の全人代でも2023年の経済成長(zhǎng)率の目標(biāo)を5%前後と明示しており、CO2排出量削減公約とのバランス問題は、とりあえず橫に置かれている感じだ。
経済成長(zhǎng)が上振れしても新エネルギーへの転換などを加速させれば、2030年までのCO2排出量ピーク化は可能だと主張している識(shí)者もいる。しかし2021~22年には、五か年計(jì)畫の目標(biāo)値でもある「単位GDP當(dāng)りのCO2排出量及びエネルギー消費(fèi)量削減率」が未達(dá)になっている。
新型コロナ感染拡大やゼロコロナ政策による封じ込めで、2021年に一時(shí)的に経済成長(zhǎng)率が高まった(8%強(qiáng))ことで、明らかにCO2削減政策は前に進(jìn)められなかった。
第3の課題は、國(guó)家の経常収支の構(gòu)造である。図3は中國(guó)の國(guó)際経常収支の推移を示したものである。
図3によれば、中國(guó)は21世紀(jì)に入ってから、経常黒字を続けており國(guó)際収支は安定している。しかしその経常収支を支えているのは、ほとんどが貿(mào)易黒字である。
日本も國(guó)際経常収支の黒字國(guó)であるが、そのほとんどは第一次所得収支、つまり海外投資の結(jié)果得られる配當(dāng)収入などの還流が経常収支を支えている。一方ドイツも所得収支と貿(mào)易収支が支える経常黒字國(guó)であり、米國(guó)は巨大な経常赤字國(guó)だがそれでも所得収支は大きな黒字を計(jì)上している。
中國(guó)経済は、巨額の貿(mào)易黒字を続けているが、貿(mào)易黒字は2國(guó)間での摩擦を生み、製造拠點(diǎn)の海外移転なども進(jìn)むためやがて縮小に向かうはずだ。つまり中國(guó)は経済の成熟化とともに、貿(mào)易収支のようなフロー依存から、日獨(dú)米のような投資収益いわゆるストック依存の収支構(gòu)造に移行していかなければならない。そのための鍵は、企業(yè)の海外投資の促進(jìn)と収益化である。
以上中國(guó)経済の3つの重要課題をあげてみた。そしてこの課題こそが日本企業(yè)のビジネスチャンスになり得るというのが筆者の見立てである。
製造業(yè)などの生産性向上においては、設(shè)備機(jī)器の改良や生産管理の高度化などが必要だ。またCO2排出量削減においては、エネルギー転換だけでなく、既存の生産工程の地道な改善や、中國(guó)の製造業(yè)の多くを占める全國(guó)の経済技術(shù)開発區(qū)のゼロカーボン化なども必要だ。
また企業(yè)のストック的利益を確保するために、海外投資の収益化にも目を向けなければならないだろうし、今後は知的財(cái)産権による?yún)毪鈮埣婴丹护皮い胜堡欷肖胜椁胜?。それこそが経済の質(zhì)的発展にもつながるからだ。
今、日本企業(yè)の中國(guó)ビジネスは一つの岐路に差し掛かっていると言える。米中対立を背景としたサプライチェーンのデカップリング進(jìn)行はある程度避けられない。しかしこれまで東アジアでの國(guó)際分業(yè)や究極の省エネルギー化を進(jìn)めてきた日本としては、中國(guó)経済の課題周りに注目すれば、ビジネス化のネタが豊富にあることに気がつくはずだ。中國(guó)ビジネスは、今こそ知恵出しが必要だと思う。
■筆者プロフィール:松野豊
大阪市生まれ。京都大學(xué)大學(xué)院衛(wèi)生工學(xué)課程修了後、1981年野村総合研究所入社。環(huán)境政策研究や企業(yè)の技術(shù)戦略、経営システムのコンサルティングに従事。2002年、同社の中國(guó)上海法人を設(shè)立し、05年まで総経理(社長(zhǎng))。07年、北京の清華大學(xué)に同社との共同研究センターを設(shè)立して理事?副センター長(zhǎng)。 14年間の中國(guó)駐在を終えて18年に帰國(guó)、日中産業(yè)研究院を設(shè)立し代表取締役(院長(zhǎng))。清華大學(xué)招請(qǐng)専門家、上海交通大學(xué)客員研究員を兼務(wù)。中國(guó)の改革?産業(yè)政策等の研究を行い、日中で講演活動(dòng)やメディアでの記事執(zhí)筆を行っている。主な著書は、『參考と転換-中日産業(yè)政策比較研究』(清華大學(xué)出版社)、『2020年の中國(guó)』(東洋経済新報(bào)社)など。
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