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獨(dú)立後最悪の経済危機(jī)に陥っているスリランカ。寫真は首都コロンボ。
獨(dú)立後最悪の経済危機(jī)に陥っているスリランカ。辭任したマヒンダ?ラジャパクサ首相の後任として、同首相の弟のゴダバヤ?ラジャパクサ大統(tǒng)領(lǐng)からの指名で5月12日に首相に就任した野黨?統(tǒng)一國民黨(UNP)黨首のラニル?ウィクラマシンハ氏の決斷の日々が続いている。新型コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻という國際情勢下での國際通貨基金(IMF)からの救済措置取り付けといった経済分野だけでなく、民族問題、宗教問題など難題が山積。無力化した一院制の議會(huì)の権限復(fù)活という課題にも立ち向かっている。
ウィクラマシンハ首相は5月30日、特別聲明を発表し、その中で問題は経済分野だけに限らないとして、両兄弟が率いた前政権時(shí)代に行われた、憲法の20次改正での大統(tǒng)領(lǐng)権限拡大?強(qiáng)化を縮小するため、憲法の19次改正の復(fù)活、正式には憲法の21次改正を根回ししている。2015年の19次改正は、UNPのラニル?ウィクラマシンハ総裁とスリランカ自由黨(SLFP)のパーラ?シリセーナ幹事長(肩書はいずれも當(dāng)時(shí))が組んでマヒンダ?ラジャパクサ大統(tǒng)領(lǐng)の三選を阻止した後の政権(シリセーナ大統(tǒng)領(lǐng)、ウィクラマシンハ首相)時(shí)に行ったもの。19次憲法改正で導(dǎo)入された憲法評(píng)議會(huì)(Constitutional Council=CC)の下では、大統(tǒng)領(lǐng)はCCが推薦した候補(bǔ)の中から選挙管理委員會(huì)、公務(wù)員の人事委員會(huì)、汚職調(diào)査委員會(huì)、國家物品調(diào)達(dá)委員會(huì)など獨(dú)立委員會(huì)の構(gòu)成員を選出することが義務(wù)付けられた。
◆政権交代で繰り返される憲法改正、混亂に拍車
同國では政権が変わるごとに憲法改正が行われるのが常態(tài)化しているが、大統(tǒng)領(lǐng)権限を拡大?強(qiáng)化した20次改正での目玉は、前政権が設(shè)けたCCの廃止だったとされる。その結(jié)果、両兄弟の身內(nèi)や取り巻きが閣僚に指名され、その手ですべてが決まってしまったとされる。
ウィクラマシンハ首相は特別聲明の中で、獨(dú)立前にあった州議會(huì)(State Council)にも言及し、議會(huì)の政策遂行能力?権限を強(qiáng)化する各種の委員會(huì)、そうした委員會(huì)の監(jiān)査委員會(huì)を含め15の委員會(huì)を設(shè)けることを提案している。
同首相はまた、そうした委員會(huì)への若者の代表選出も提案。それには反対派グループや活動(dòng)家グループからの參加も追求するとしている。さらに、同首相は國會(huì)の議長、首相、主要政黨や野黨の指導(dǎo)者から成る國家評(píng)議會(huì)(National Council)の設(shè)置を重視している。國難からの脫卻に向けた一大連立政権の創(chuàng)出努力といえる。
憲法の21次改正に関する5月27日の會(huì)合にはタミル國民連合(TNA)からの參加がなかったため、6月上旬の會(huì)合で決定すると同首相はしている。しかし、TNAは議會(huì)の解散?総選挙実施を主張しており、すんなりといきそうにない。
◆IMFに救済措置求める
経済危機(jī)からの脫卻では、IMFと協(xié)議を進(jìn)め、救済措置を取り付けなければならない。IMFは5月9―24日、スリランカの當(dāng)局者と救済措置が可能かどうかを探るオンライン協(xié)議を?qū)g施。その後に、深刻な國際収支狀況、燃料?電力不足、國際的な食料?燃料価格上昇、インフレの高進(jìn)などを指摘。特に貧困層?弱者グループの危機(jī)的な狀況に深刻な懸念を示した。
ウィクラマシンハ首相は、5月末に、インフラ事業(yè)の削減、暫定予算の提出意向を示したが、IMFは両兄弟が牛耳った政権時(shí)代にとった減稅政策などを問題視しており、スリランカ支援は「IMFの政策に沿った形になる」としている。スリランカ政府は5月31日、付加価値稅を8%から12%へ、法人稅を24%から30%へといった一連の増稅案を決定した。
IMFの具體的な緊急支援は6月以降になると見られ、それまでのつなぎ融資として30-40億ドルの手當(dāng)てをしなければならないとされる。
◆「一帯一路」が影響、中印などの「つなぎ融資」が頼り
ラジャパクサ兄弟は、中國の「一帯一路」戦略の下で、高利の融資による道路、鉄道、港灣などのインフラ開発を進(jìn)めた。地元ハンバントタには不似合いの國際空港まで建設(shè)した。借金の返済に窮し、ハンバントタ港の運(yùn)営権を99年リースで譲り渡さざるを得なくなった。中國には約35億ドルの債務(wù)の再編を申し入れたというが、中國が受け入れたという報(bào)道はない。中國はつなぎ融資枠設(shè)定には応じたようだ。
70歳を超えたベテラン政治家のウィクラマシンハ首相は、インドとの関係は良いと見られ、インドからのつなぎ融資枠は確保している。
日本は5月20日、林芳正外相が、スリランカに対する300萬ドル(約3億8000萬円)緊急無償資金協(xié)力実施を発表している。これは、國連の児童基金(ユニセフ)と世界食糧計(jì)畫(WFP)を通じた醫(yī)薬品と食料支援の資金協(xié)力だ。ラジャパクサ大統(tǒng)領(lǐng)は日本に対しても、つなぎ融資を要請しているという。
1951年9月にサンフランシスコで開かれた、日本と米國など連合國との第二次世界大戦の講和會(huì)議で、サンフランシスコ平和條約が締結(jié)され、日本の主権回復(fù)が認(rèn)められた。その際、「憎しみは憎しみによって消え去るものではなく、慈悲によって消え去るもの」と演説したスリランカのJ?R?ジャヤワルデナ蔵相(當(dāng)時(shí))の恩は日本人の胸に刻まれている。第二代大統(tǒng)領(lǐng)となったジャヤワルデナ氏は大の日本びいきで、昭和天皇の大喪の禮にはいち早くはせ參じている。
古くは、仏教の最古のパーリー語経典「スッタニパータ」を伝えたのは南方上座部仏教、いわゆる南伝仏教。スリランカからタイ、ミャンマーなどを通じ日本にもたらされた。チベットなどから東アジアにもたらされた大乗と稱する北伝仏教からは「小乗」などと蔑稱扱いされるが、南方上座部仏教が本流とされる。この面でも日本とセイロン(現(xiàn)スリランカ)の関係は長い歴史を有する。
人口の13%強(qiáng)の約300萬人が従事する観光が、世界的な観光復(fù)興の波に乗って勢いを吹き返し、また中東などへの出稼ぎ労働者からの送金も復(fù)活するという幸運(yùn)(セレンディピティ)に遇うことも願(yuàn)ってやまない。
■筆者プロフィール:中村悅二
1971年3月東京外國語大學(xué)ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業(yè)新聞社入社。編集局國際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企畫庁(現(xiàn)內(nèi)閣府)、外務(wù)省を擔(dān)當(dāng)。國連?世界食糧計(jì)畫(WFP)日本事務(wù)所広報(bào)アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業(yè)材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米國情報(bào)産業(yè)の狙うもの』(いずれも日刊工業(yè)新聞社刊)。
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