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日本語(yǔ)教師の需要を見(jiàn)込める前向きな材料には事欠かないものの、中國(guó)経済全體の陰りや「躺平主義」ゆえに楽観は許されない。中國(guó)の日本語(yǔ)ネットスクール側(cè)と日本人教師側(cè)に、今どんな影響が生じているのか。
「中國(guó)企業(yè)が日本語(yǔ)教師に求める人材像から學(xué)べる教訓(xùn)とは何か。このご時(shí)世、中國(guó)の企業(yè)に雇われて日本でリモートワークをするという選択肢もまた確かに存在する、ということにほかならない。そう、こんなご時(shí)世でも、誰(shuí)も決して座して死を待つ必要はない。」
そんな「中國(guó)でリモート日本語(yǔ)教師のススメ」みたいな記事を書かせていただいて、早いものでもう1年3カ月がたつ。僕はいまだにこの日本語(yǔ)教師の仕事をさせていただいており、まあ順調(diào)なので辭める予定は全くない。
もっとも、これには幾つか理由がある。
10年程前になるが、中小企業(yè)の中國(guó)進(jìn)出をお手伝いさせていただいた。その當(dāng)時(shí)も今と同様、日本ではまず見(jiàn)いだせないような活路が中國(guó)にはあった。
當(dāng)時(shí)は世界の工場(chǎng)としてメイドインチャイナの品々を世界中に送り出すまでになった中國(guó)にあやかるべく、率直なところ賭けに近い部分もある中國(guó)進(jìn)出が世間の耳目を集めていた。賭けに近いというのは、少なくない企業(yè)が日本式のやり方で何とか進(jìn)出するものの、軒並み失敗していたからだ。
それが6年位前になると、今度は大企業(yè)が中國(guó)でさらに販路を拡大するにはどうしたらいいかというセミナーのお手伝いをさせていただくようになった。その當(dāng)時(shí)も今と同様、日本ではまず見(jiàn)いだせないような需要が中國(guó)にはあった。
大企業(yè)だから中國(guó)側(cè)とのすり合わせもより周到になるわけだが、當(dāng)然のことながら日本とは勝手が違う。これに日中の尖閣問(wèn)題や中國(guó)側(cè)の「一帯一路」が加わった結(jié)果、中國(guó)市場(chǎng)で相応の地歩を固めることのできた大企業(yè)でさえ苦戦を強(qiáng)いられていた。
そして2、3年前になって「黒船の來(lái)航」となる。つまり最初に述べたように、中國(guó)の一般企業(yè)が日本で普通に求人広告を打つまでになった。今、日本ではまず見(jiàn)いだせないような日本語(yǔ)教師の求人が中國(guó)にはある。
だから僕が中國(guó)で日本語(yǔ)教師をしているのは、単なる偶然ではない。メイドインチャイナであれ「一帯一路」であれ日本語(yǔ)教師の求人であれ、僕たちは大なり小なり中國(guó)の存在感を意識(shí)させられている。
とはいえ、そんな中國(guó)であっても存在感に陰りが全くないわけではない。最近日本でも報(bào)じられているような中國(guó)経済全體の陰りがあり、それに呼応するかのような中國(guó)若年層の陰り、「躺平(とうへい)主義」こと「寢そべり主義」がある。
実のところ「雙減政策」のような教育にかかわる中國(guó)の政策も日本語(yǔ)教師という業(yè)種にある程度の打撃を與えるものの、中國(guó)経済全體の陰りや「躺平主義」の直撃と比べれば全然ましである。
そんなわけで今回は、中國(guó)の日本語(yǔ)ネットスクールで雇う側(cè)と雇われる側(cè)-會(huì)社側(cè)と日本人教師側(cè)-に今どんな影響が生じているのか、インタビューを通して皆さんにご紹介したい。
(以下はコロナ禍ゆえメールインタビューの體裁を取っており、ご了承いただきたい)
――最初にお名前とポジションまた會(huì)社について少しご紹介ください。
李:李と申します。現(xiàn)在、早道ネットスクールで日本人教師の皆さんのお世話をさせていただいています。
光田:光田佑己子(以下、光田)と申します。ハーフの子供をアメリカ?中國(guó)?日本で育てた主婦です。今は早道ネットスクールで日本語(yǔ)教師として働かせていただいています。
――貴社は日本人講師を募集していますが、最近の応募狀況などはいかがですか?
李:今も募集中ですよ。正直、すべての先生が殘ってくださるわけではありませんので、欠員を補(bǔ)充しなければなりません。現(xiàn)在の応募狀況は相応なので、お陰様で十分な數(shù)の先生を確保することができています。
――光田さんも比較的最近になってこちらで日本語(yǔ)教師をされているとお聞きしています。ハーフのお子さんもいらっしゃるのですね。
光田:はい。先程もお話した通り子供には3つの國(guó)を家族の都合で行き來(lái)する生活をさせたため、7歳で日本へ帰國(guó)當(dāng)時(shí)、國(guó)語(yǔ)で0點(diǎn)を取るような狀態(tài)にとても心配して、機(jī)に椅子を2つ並べて日本語(yǔ)を少しずつ毎日毎日教えましたね。
――私もハーフの子どもの親ですので、そのご心配よく分かります。ですがアメリカ?中國(guó)?日本で生活すれば、逆に有利な面もあったのでは?
光田:ええ(笑)。週末には英語(yǔ)維持と中國(guó)語(yǔ)維持教室へ通いました。アメリカのサマースクールにも毎年のように通いましたが、中學(xué)からは日本のインターナショナルスクールに入學(xué)、結(jié)果として英検1級(jí)を10代で満點(diǎn)合格、TOEFLも10代で110點(diǎn)以上取得、中國(guó)語(yǔ)検定も取得するというトリリンガルに今は育ち、舊帝國(guó)大學(xué)にも現(xiàn)役合格し、今はほっとしています。
――それはすごい。それで、そのトリリンガルの子育て経験を日本語(yǔ)教師の仕事に生かしたかったと。
光田:うーん、そこまでの道のりが確かに平坦なものではなかったので、海外育ちの子供の語(yǔ)學(xué)教育や、今まで私1人が家の中でたった1人外國(guó)人という経験を活かせる仕事がないかと思っていました。それで、子育てが一段落してから文化庁認(rèn)定の420時(shí)間日本語(yǔ)教師養(yǎng)成講座に通い始めたんです。
――いろいろな背景の先生方が集まっていらっしゃいますね。ところで日本人講師は會(huì)社側(cè)から見(jiàn)てどうですか?何か要望とかはありましたか?
李:そうですね、まず中國(guó)人の學(xué)生たちは大部分の日本人教師に満足しています。會(huì)社としても學(xué)生からのフィードバックを逐一お伝えして、レッスンの質(zhì)の改善を図っています。でもまず、日本人教師の皆さんには正確な日本語(yǔ)を教えてもらいたいですね。中國(guó)人の學(xué)生にもできる限り話させて正確さをチェックしてもらいたいです。學(xué)生側(cè)は學(xué)費(fèi)を払って會(huì)話レッスンを受けていて、日本人教師から実生活で実際に通じる日本語(yǔ)を教えてもらいたいと思っているわけですから。
――それは道理ですね。
李:ええ、そして中國(guó)人學(xué)生の間違いを都度、きちんと直してほしいです。勵(lì)ましも重要なんですが、學(xué)生が間違った発音や文法の日本語(yǔ)を話しているのに「勵(lì)まし」では、日本人教師として責(zé)任を果たし切れていません。あとレッスンの時(shí)にテキスト上の日本語(yǔ)をただ教えるにとどまらず、日本ではこの日本語(yǔ)を?qū)g際にどう使うのかとかを補(bǔ)足して、學(xué)生に日本語(yǔ)だけでなく日本や日本人についても學(xué)べるようにしてほしいですね。
――仰る通りですね。では光田さんは日本人として中國(guó)企業(yè)で働いてみてどうですか?中國(guó)企業(yè)側(cè)に要望とかはありますか?
光田:親族が中國(guó)や日本やアメリカで會(huì)社経営や病院経営をしていたりするので、どこの國(guó)の企業(yè)で働いているという感覚は正直あまりないですね。中國(guó)企業(yè)側(cè)に要望とかは全くないです。
――これは愚問(wèn)でした。逆に言えば、會(huì)社側(cè)に要望があるようであれば最初から來(lái)ることもないと。どうでしょう、最近は中國(guó)における経済狀況も変化していると聞いています。貴社の日本人の雇用に何か影響はありましたか?
李:うーん、この質(zhì)問(wèn)はパスさせてください。私は日本人教師擔(dān)當(dāng)の中國(guó)人スタッフに過(guò)ぎないので。
――これも愚問(wèn)でしたね、失禮しました。一方で日本では今、コロナ禍を機(jī)に大転職時(shí)代が到來(lái)した感があります。どうして今、日本語(yǔ)教師の仕事なのか、なぜ中國(guó)企業(yè)で働くのか、光田さんはどう思われていますか?
光田:コロナ禍が來(lái)ると思わずに日本語(yǔ)教師養(yǎng)成學(xué)校に入學(xué)しましたから、學(xué)校內(nèi)でもいきなりオンライン授業(yè)になったんですよ。それにクラスメートたちが卒業(yè)後、日本語(yǔ)教師として採(cǎi)用されるために苦戦している中なので、正直、私自身はコロナ禍を機(jī)に大転職時(shí)代が到來(lái)したとは思っていません。
――やられました、愚問(wèn)が続き申し訳ない。メディアが言うところの「大転職時(shí)代」という表現(xiàn)も、正直考え物ですね。
光田:いえいえ(笑)。卒業(yè)後すぐにこちらに採(cǎi)用になったのは、自分が優(yōu)秀だったからとかでは決してなく、ひとえに私自身が日本國(guó)內(nèi)だけに目を向けていなかったからだと思っています。ですので、なぜ中國(guó)企業(yè)で働くのか?というよりは、採(cǎi)用になった會(huì)社が中國(guó)にあったというだけだと私は思っています。
――なるほどですね。ただ、中國(guó)に頼りきりで本當(dāng)に大丈夫なのか?との思いが日本人にはあります。たとえば日本でも中國(guó)の「躺平主義」について報(bào)じられています。
李:躺平をどう見(jiàn)るかは人によってまちまちなのでは、と思います。私自身は良い將來(lái)を思い描きたいですし、若い時(shí)分に早くも躺平を決め込むなら、良い將來(lái)など望めません。もっとも、ある人たちが多くを望まず、その日暮らしでも構(gòu)わないというのであれば、躺平をとがめることもできないでしょう?
――そりゃそうです(笑)。光田さんはどうでしょう?私も中國(guó)にいますので、中國(guó)の躺平主義を肌で感じ始めています。中國(guó)人の生徒さんを教えていて、そうした影響を感じることがありましたか?
光田:私たちは今はもう中國(guó)に住んではいないので、躺平主義を肌で感じるということはありませんが、自分の子どもと同世代の若者たちが躺平になってしまうというのは、その親御さんとしてはとても辛いことだし虛しい気持ちになると思います。
――ということですね。躺平は、まず親に直撃だと。
光田:そうです。その親御さん世代が「自らの立身出世を必ず葉える!」という強(qiáng)い意志のもと、ものすごいハングリー精神で高考を突破し重點(diǎn)大學(xué)などを出て海外で教授になったり國(guó)費(fèi)留學(xué)生として海外の大學(xué)を卒業(yè)後に世界的企業(yè)のCEOになったりという現(xiàn)実を身近で観察する機(jī)會(huì)があったものですから。その一方で今の中國(guó)の優(yōu)秀な若者たちが今後どのように生きていけば最も幸福を感じ、心の平安を保ち、希望を持って生きていけるか、という問(wèn)題はかなり大きいと思っています。
――ですね。光田さん自身も日本語(yǔ)レッスン中に、その躺平の「直撃」を受けたとお聞きしています。
光田:ええ。たまたまテキストが「生きる」という內(nèi)容だったからかもしれませんが、「親の期待に疲れた、だから私は何も持たないことにした、捨てて行く人生を選んだ」と生徒さんが吐露された時(shí)には、胸が締め付けられるような感覚を覚えました。もう一人の生徒さんは日本語(yǔ)もハイレベルで、職業(yè)からすれば相応の社會(huì)的地位を手に入れた方でしたが、「私は何でも持っている。でも現(xiàn)実は何も持っていない」と流暢な日本語(yǔ)で話しておられました?!溉摔蟽Pくために生きているのではなく、生きるために働きたい」という年齢國(guó)籍に関係なく皆に共通した思いについて、私もいろいろと考えさせられます。
僕自身、このインタビューを通して考えさせられた。
中國(guó)の若い人たちも、その親も、中國(guó)の人たちに日本語(yǔ)を教える日本人教師も、そして恐らくはこの社會(huì)この世界で生きる誰(shuí)もが、大小の差こそあれ苦しんでいる。
それはなぜか。非常に殘念なことではあるが、この社會(huì)この世界という「箱」は誰(shuí)も変えることができないからだ。
中國(guó)の富裕層や勝ち組の親でさえ、「箱」そのものを変えることは到底できない。どんな國(guó)であれ企業(yè)であれ個(gè)人であれ、この「箱」の中における制約から到底逃れられない。そんなことは有史以來(lái)の自明の理ではあるのだが、改めて「曲がっているものは真っすぐにできない」という格言を思い出さずにはいられない。
では、中國(guó)の日本語(yǔ)學(xué)校における日本人教師の展望はどういうものか。
別の記事でも書いた通り「中國(guó)國(guó)際移民報(bào)告2020」や外國(guó)人向け「やさしい日本語(yǔ)」といった日本語(yǔ)教師の需要を見(jiàn)込める前向きな材料には事欠かない。
だが「箱」の中から出られない僕たちの誰(shuí)も、楽観は許されない。
今、日本ではまず見(jiàn)いだせないような日本語(yǔ)教師の求人が中國(guó)にあるが、もう10年も前から明らかなように、日本式の考え方ややり方では違和感があり、続けるのは困難だろう。もう6年も前から明らかなように、狀況が変化すれば誰(shuí)もが苦戦を強(qiáng)いられる。
そして2、3年前から徐々に明らかになってきたのだが、「企業(yè)側(cè)に要望とかは全くない」「働くために生きること」をある程度甘受できるような人であれば、日本語(yǔ)教師に限らず、どこであれ何とかやっていけるのだろう。
一方でここ中國(guó)では既に、若者を含め寢そべるほうを選んだ一群の人々がいる。立ったまままたは座ったまま突然死するより寢そべったまま自然死したい、ということなのだろうか。すべての人のため、この社會(huì)この世界という「箱」がいつの日か変わることを願(yuàn)ってやまない。
■筆者プロフィール:大串 富史
本業(yè)はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中國(guó)?北京に8年間、中國(guó)?青島に3年間滯在。中國(guó)人の妻の助けと支えのもと新HSK6級(jí)を取得後は、共にネット留學(xué)を旨とする「長(zhǎng)城中國(guó)語(yǔ)」にて中國(guó)語(yǔ)また日本語(yǔ)を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中國(guó)?中國(guó)人?中國(guó)語(yǔ)學(xué)習(xí)?中國(guó)ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執(zhí)筆中。
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