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日中両國の新聞?通信、テレビなどの編集幹部による「日中メディア対話會」がこのほど上海外國語大を中心に開催され、筆者も出席した。意見の相違も目立ったが、「小異を殘して大同につき、相手國のプラス面も積極的に報道するべきだ」との點で一致した。寫真は同大學。
日中関係は改善の兆しが見られるものの、なお両國の國民感情にはわだかまりが殘っている。両國の新聞?通信、テレビなどの編集幹部による「日中メディア対話會」がこのほど上海外國語大學を中心に開催され、筆者も出席した。意見の相違も目立ったが、「小異を殘して大同につき、相手國のプラス面も積極的に報道するべきだ」との點で一致した。
このメディア対話會は上海外國語大學と公益シンクタンク鍵叡が主催。日本側(cè)からNHK、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、Record Chinaなど。中國側(cè)からCCTV(中央電視臺)、新華社、人民日報、環(huán)球時評、解放日報、上海文匯報、香港フェニックスグループなどの、それぞれ編集幹部が出席した。上海外國語大日本文化経済學院?廉徳瑰教授と谷野作太郎元駐中國日本大使がコーディネーターを務(wù)め、同大教員や大學院生が聴講?サポートした。
◆日中首脳の相互訪問実現(xiàn)を
主催者を代表して廉教授は冒頭、「2017年は日中國交正?;?5周年の節(jié)目の記念すべき年。両國関係は徐々に回復(fù)する傾向があるものの、未解決の間題が多い。両國國民の不信感が生じる根本的な原因は両國の構(gòu)造的な矛盾にあり、その要因の一つは日中メディアがお互いに理解し合えなかったためと思われる。國民感情は両國関係正?;位A(chǔ)で、メディアの報道は國民感情を左右する。メディアは大局を念頭に置くべきで、日中メディア同士の交流を深めることによって、日中友好促進のために全力を盡くしたい」と挨拶した。
谷野元大使は「日中両國は今年國交回復(fù)45周年を迎えて、なお現(xiàn)首脳による相互訪問が実現(xiàn)しておらず、きちんとした形でトップ會談を開催するべきだ。両國民の間の國民感情を改善するために、メディアの果たす役割は大きい。中國メディアは『共産黨と政府のノド(伝達者)』といわれるが、一部は権力を指弾する勇気を持っている。日本のメディアは『社會の木鐸』を標榜しながらも一部メディアは営業(yè)的な利益に負けて“反中”“反韓”に染め上げてしまうところがある」と問題提起した。
◆大國としての振る舞い、中國メディアも「促している」
延べ8時間にわたった討議の主な論點は次の通り。
▼中國側(cè) 真の平和友好へ、歴史認識の問題が大きい。60年前のエリゼ條約によって仏獨間の民族感情の和解がなされた。日中韓國でもこうした和解への努力が必要だ。
▼日本側(cè) 中國には落ち著いた大國としてのふるまいを期待したい。ダライラマ(チベット教生き仏)、サード(THAAD?高高度ミサイル防衛(wèi)システム)問題への対応は過剰反応ではないか。尖閣國有化後の反日デモもひどかった。
▼中國側(cè) ダライラマ、サード、魚釣島などへの対応は、民間や地方実務(wù)者の裁量“忖度”の可能性を排除できない。包容力のある大國としてのふるまいは中國としても心がけており、メディアも促している。
▼日本側(cè) 中國の習近平體制は、三権分立など民主主義の歐米流のモデルより中國モデルの方が優(yōu)っていると信じているようだ。米歐の現(xiàn)在の政治的混亂と経済低迷を見ればそうかもしれないが、中國も民主制を取り入れるべきではないか。國際的にはルールを順守すべきだ。
▼中國側(cè) 中國には歐米や日本と異なる中國獨自の民主主義がある。経済でも文化でも貧困?格差対策でも、確実に進展している。中國は米國のように自分のモデルを輸出しようとはしていない。腐敗撲滅、改革の徹底など中國の國情に合わせてやっている。
◆感情排し、10年後に耐える報道を!
▼日本側(cè) 日中共同世論調(diào)査によると、領(lǐng)土をめぐる日中間の軍事紛爭について「起こると思う」と考える人は、日本側(cè)が28%だったのに対し、中國側(cè)は62%。中國で6割を超えたのは調(diào)査開始以來初めてだ。日中関係がここまで悪化してしまった最大の問題は領(lǐng)土問題と考える。日本の「國有化」、中國の反日デモといった流れによって、日中両國の領(lǐng)土ナショナリズムに火がついた。それまでの「棚上げ」という先人の知恵を無視して動いてしまったため表出しているのが現(xiàn)在の狀況ではないか。
▼中國側(cè) 靖國參拝問題など歴史認識を巡る問題も大きい。安倍首相にとって理性的選択は日中國交正?;?5周年及び平和友好條約締結(jié)40周年の機を借りて、関係改善に努力し、來年前半と後半に両國首脳の相互訪問を?qū)g現(xiàn)し、地域の平和と安定に貢獻して、外交的ポイントを稼ぐことではないか。
▼中國側(cè) わが社の報道は日本の良さを具體的にシリーズで伝えている。日本は政治では「人事権力闘爭」、経済では「崩壊」といった暗い面をことさら強調(diào)するものが多い。中國の悪い面よりも、よい面や國民の暮らしぶりなどを系統(tǒng)的に紹介すべきだ。
▼日本側(cè) 日本ではネットやSMSニュース時代を迎え、感情的で極端な書き込みが多い。このような言辭に対抗して真実を伝えるべきだと思う。
▼中國側(cè) 同様の悩みを持っており、協(xié)力して真実を追求していきたい。
<廉教授総括>
雙方に相違點はあったが、共通認識もあり、有意義な討議だった。日中間の問題解決へ一層の交流が必要だ。過去の歴史への謝罪、教科書問題の解決はそのチャンスとなる。短期的ではなく報道理念を堅持して、十年後に生きる報道をすべきだ。雙方のメディアの責任は大きい。
<谷野元大使総括>
互いの考え方を率直に語り合い有意義な會議だった。ネット右翼の問題にも共通の認識を持つことができた。極端な勢力にはめげずに、強い意思で真実を伝えることが報道の責務(wù)である。米國がトランプ大統(tǒng)領(lǐng)の登場で混亂する中、日中が協(xié)力できることは多く存在する。十年後に耐える議論や報道を作り出せるかどうかが問われる。
◆「報道」の在り方、日中間に大きな相違
以上今回メディア対話會の模様を紹介したが、経済のグローバル化や政治の多極化、技術(shù)の進歩がすさまじい勢いで押し寄せ、新舊メディアの境界、國內(nèi)と國際問題の境界がなくなった。中國のメディアは國営通信社?新華社を頂點とした、ヒエラルキーが厳然と存在、政府の意向に沿った報道がなされるよう、規(guī)制されているが、あまり問題と考えていないように見えた。むしろ新華社など政府系メディアには「社會の安定?発展を促すニュース」を選択して報道すべきだとの「読者啓蒙論」が強く、「マイナス情報もすべて報道し、読者の判斷に委ねる」との日本メディアの考え方とは大きく異なり、「真実?事実とは何か」を巡っては大きな隔たりがある。筆者は日本や中國で開催された日中メディア対話に度々出席しているが、今回の対話會でもこの傾向がさらに強まっていることを?qū)g感した?!钢腥Aの夢」の実現(xiàn)を標榜する習近平體制の下で、経済?軍事大國が実現(xiàn)しつつあることで、自信を深めているようだった。
◆中國記者、告発取材で“夜討ち朝駆け”も
中國では新聞の數(shù)も発行部數(shù)も多く、新聞の間の競爭も激しい。読者は、官僚の不正、汚職、公害、食品の安全などの積極的な告発記事を求めており、中國の若い記者の多くは「夜討ち朝駆け」による「不正」や「社會悪」追及に生きがいを見出している。このため、過激な論調(diào)のものが出回りやすい。共産黨政権はメディア管理體制を強化しているが、自身に「刃」が向かわない限り容認。社會浄化につながるとして推奨している面もある。上海外語大の大學院生は「中國ではジャーナリストは若者に人気がある」と話していた。
日中メディア間の相互理解が不足していたことを痛感するとともに、メディア同士の交流の重要性を改めて認識した?!感‘悿驓垽筏拼笸摔膜⑹瘠紊瞍夂幛肯嗍謬违抓楗姑妞夥e極的に報道するべきだ」との點で一致したことは大きな収穫だった。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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