今年6月5日、湖南省の最高裁判所が醫(yī)療廃棄物事案を通達した。この事案は140トン以上の醫(yī)療廃棄物と醫(yī)療ゴミを農家敷地內に隠蔽したとする事件の結審通達である。この隠蔽事件に関わったとされる被告人は懲役と罰金を言い渡されている。こうした醫(yī)療廃棄物処理に関わる違反行為は湖南だけではない。湖北、河北、江蘇等複數の地域で発生し大きな社會問題となっている。本稿では、中國の醫(yī)療廃棄物処理の現狀を伝える。

【その他の寫真】

【足りない醫(yī)療廃棄物処理の危険認識重視と処理施設不足】

國家発展改革委員會と環(huán)境保護部が2016年に公布した『國家危険廃棄物リスト』によれば、危険廃棄物を46大分類479種としており、この中に醫(yī)療廃棄物が1號危険廃棄物類に分類明記されている。中國政府や環(huán)境関連機関は醫(yī)療廃棄物処理に対し、これまで「危険の認識」を持たなかったため、集中処理施設も不足している。大部分の危険廃棄物の総合利用は低水平で、簡単な貯蔵か不法投棄という狀態(tài)が続いている。

1、中國の醫(yī)療廃棄物回收処理情況（図1參照）

（1）醫(yī)療廃棄物の小業(yè)者への売卻

管理監(jiān)督體制の欠如と厳格性を欠く管理等の問題がある一方で、醫(yī)療廃棄物回收事業(yè)は大きな利益構造を生み出している。いくつかに醫(yī)療廃棄物は簡単な処理を経て、新たな「醫(yī)療用品」として姿を変え、市場に出回る。さらに一部の醫(yī)療廃プラスティック製品は、消毒処理もせず、飲料品或は食品用プラスティックへと変貌している。健康への脅威は甚大だが関連業(yè)者は全く意に介さない。

（2）醫(yī)療廃棄物の不法投棄

関連部局の管理監(jiān)督が杜撰（ずさん）だ。特に辺鄙（へんぴ）な地區(qū)では醫(yī)療廃棄物は不法投棄されており、人體への直接危害が懸念されている。

（3）醫(yī)療廃棄物を生活ゴミに混入

醫(yī)療廃棄物と生活ゴミの境界線がはっきりしていない。特に醫(yī)療廃棄物の分別収集処理は手付かず狀態(tài)にある?，F在中國の、中小規(guī)模病院では未だに『消毒技術規(guī)範』で規(guī)定する関連要求を無視し分別収集は行われていない。多くの醫(yī)療廃棄物は生活ゴミに混入し、社會へと流れ込んでいる。

（4）醫(yī)療廃棄物の直接焼卻と埋め立て

『醫(yī)療機関感染管理法』という規(guī)定があり、醫(yī)療?衛(wèi)生機関は當然この規(guī)定に沿って集中処理?処分を行うこととなる。一方醫(yī)療廃棄物の集中処理?処分業(yè)者は『醫(yī)療廃棄物集中処分技術規(guī)範（試行）』と『醫(yī)療廃棄物高溫蒸気集中処理技術規(guī)範（試行）』等の基準により集中処理?処分を実施することになっている。しかし農村醫(yī)療機関では未だに集中処理?処分がされず、直接焼卻や直接埋め立て等で処理?処分を行っているのが実態(tài)である。直接焼卻された醫(yī)療廃棄物は大量のダイオキシン等の有害物質を発生させ二次汚染をもたらす。ピンセット、鍼灸、注射針などの不可燃性物質は現時點では埋め立て処分しかなく、これは地下水源汚染の一因となっている。

（5）醫(yī)療廃棄物の集中回收処理

中國で言う集中回收処理とは、指定処理専門業(yè)者による當該地區(qū)で発生する醫(yī)療廃棄物を集中的に処理することを指している。この種の処理方法を経て醫(yī)療廃棄物は工業(yè)原材料を再生する。これは中國で最も合理的な醫(yī)療廃棄物の回收処理方法としているが、管理が杜撰で責任所在が明確ではないため、この方法は実運用面で多くの問題を內包している。例えば回收ネットワークの不備とか、処理設備が古い等の問題である。

2、中國の醫(yī)療廃棄物回収処理に內包する問題

醫(yī)療科學技術の進展と國民の生活水準の向上に伴い、「使い捨て醫(yī)療衛(wèi)生用品」は広範囲で使用されるたことで、醫(yī)療廃棄物処理に大きな難題を突きつけている。この中で中國の醫(yī)療廃棄物は現社會経済の発展に比べ管理と技術レベルが遅れている。こうした遅れが醫(yī)療廃棄物の回收処理を難しくしている。

（1）混亂する院內管理

醫(yī)療廃棄物管理規(guī)定は、醫(yī)療廃棄物を先ず醫(yī)療機関內で簡単な無害化処理をすること（適正消毒等を含む）と同時に、大部分の醫(yī)療機関は後方勤務（支援、サービス部門）部門が醫(yī)療機関內廃棄物を管理することとしている。しかし一部の醫(yī)療機関では醫(yī)療廃棄物の適正消毒処理を行っておらず、醫(yī)療機関內に醫(yī)療廃棄物管理部門すら設置していない。

（2）醫(yī)療廃棄物の分別収集システムが不備

醫(yī)療廃棄物の収集は処理の中で最も重要な位置づけにあるが、中國では絶対多數の中小規(guī)模醫(yī)療機関では未だにこの點を重視していない。上述したように生活ゴミとの共同処理や、焼卻?埋め立てが常態(tài)化している。一部の発展都市にある醫(yī)療機関でも醫(yī)療廃棄物の収集活動はやっと動き出した段階にある。

（3）軽視される醫(yī)療廃棄物

健康衛(wèi)生に関する知識不足は否めない。國民は醫(yī)療廃棄物が環(huán)境と自身の健康にどれ程の危害を與えているのか全く関心がないか軽視している。例えば醫(yī)療機関で廃棄した「使用済み點滴容器」を家庭用容器として利用している。肝心の醫(yī)療機関職員も醫(yī)療廃棄物の危険性意識を持っていない。このため醫(yī)療機関職員が醫(yī)療廃棄物を処理する場合、不法投棄や不適正消毒というような事案が頻繁に起こっている。

（4）遅れる法規(guī)と管理監(jiān)督

中國內では、「環(huán)境衛(wèi)生」、「環(huán)境保護」、「公衆(zhòng)衛(wèi)生」3部門が醫(yī)療廃棄物処理の共同管理をしているが、この3部門の醫(yī)療廃棄物処理管理では未だに役割分擔が明確になっていないため醫(yī)療廃棄物管理が遅れている。これとは別に中央政府関係部門はすでに『醫(yī)療廃棄物管理條例』を公布しているもののまだ試行段階で、指導不足は否めない。

（5）科學的回收利用根拠のない回収製品

多くの醫(yī)療廃棄物は回収?利用が可能だが、合理的な回收には到っていないか、科學的回收利用の根拠と手段がなく、環(huán)境汚染や資源浪費となっている。

（6）処理費用問題

醫(yī)療廃棄物処理費用の徴収基準は、第一類基準の醫(yī)療廃棄物重量による徴収と、第二類基準の醫(yī)療機関のベッド數により徴収する2種類がある。処理費用は各地バラバラでその上格差は非常に大きくなっている。ベッド數による徴収基準では、醫(yī)療機関は焼卻施設を設けると処理コストが高くなるため、醫(yī)療廃棄物を生活ゴミとして処理企業(yè)に処理を委託している。重量による徴収では、醫(yī)療機関が知らないうちに処理定額が超過し負擔が増加する現象が起こっている。特に中小規(guī)模醫(yī)療機関は醫(yī)療経費徴収が有限で且つ収入も少ないため、醫(yī)療機関は処理業(yè)者に対し自主的な大幅割引を強要している。こうした処理費用基準の「不明確」は、醫(yī)療廃棄物の完全無害化処理を遅らせている。

3、醫(yī)療廃棄物処理目標

2002年から2011年の9年間、中國の都市化率は1．35％（年平均）で急進、都市人口は年平均2096萬人増加した。2011年の都市人口は51．27%に達し、2002年比で12．18ポイント上昇した。都市人口は6億7079萬人（2002年比で1億8867萬人増加）している。

都市人口の増加は中國の醫(yī)療廃棄物をも増加させ、醫(yī)療廃棄物汚染は深刻を極めている。環(huán)境保護部等4部門が公布した「『十二五計畫（2010?15年）』危険廃棄物汚染防治計畫」では、醫(yī)療廃棄物收集システムの建設強化を要求している。2015年末には都市部（県級都市、地方級都市及び直轄市を含む）において醫(yī)療廃棄物の無害化実現を求め、さらに醫(yī)療廃棄物の収集運搬メカニズムと費用徴取制度の見直し実施を求めるとしている。図2は危険（醫(yī)療）廃棄物集中処理場の運転費の推移。予測では2020年には200億円（約3341億円）を超える市場を創(chuàng)出する。

■筆者プロフィール：內藤康行

1950年生まれ。橫浜在住。中學生時代、図書館で「西遊記」を読後、中國に興味を持ち、臺灣で中國語を學ぶ。以來40年近く中國との関わりを持ち現在に至る。中國の環(huán)境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中國環(huán)境事情リサーチャーとして情報を発信している。

■筆者プロフィール：內藤 康行

1950年生まれ。橫浜在住。中學生時代、図書館で「西遊記」を読後、中國に興味を持ち、臺灣で中國語を學ぶ。以來40年近く中國との関わりを持ち現在に至る。中國の環(huán)境全般と環(huán)境（水、大気、土壌）に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中國環(huán)境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中國水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現狀」（用水と廃水2016?9）、「中國水ビジネス産業(yè)の現狀と今後の方向性」（用水と廃水2016?3）、「中國の農村汚染の現狀と対策」（CWR定期レポ）など。