日中関係は「運(yùn)命共同體」=戦前の対中外交の敗因とは?―現(xiàn)役の上海総領(lǐng)事が書いた『対中外交の蹉跌―上海と日本人外交官』

八牧浩行    2017年8月24日(木) 18時37分

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片山和之上海総領(lǐng)事著『対中外交の蹉跌―上海と日本人外交官』は、5度の中國勤務(wù)をはじめ米國、ベルギーなどで外交官として勤務(wù)したベテラン外交官による渾身の力作。戦前戦後の日中関係と今後の展望が描かれている。寫真は日本記者クラブで會見する片山氏(8月3日)。

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片山和之著『対中外交の蹉跌―上海と日本人外交官』は、現(xiàn)役の上海総領(lǐng)事で、5度の中國勤務(wù)をはじめ米國、ベルギーなどで外交官として勤務(wù)したベテラン外交官による渾身の力作。戦前戦後の日中関係と今後の展望が描かれている。

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戦前の上海は、総領(lǐng)事館とともに公使館?大使館事務(wù)所が設(shè)置され、日本の対中外交上の一大拠點(diǎn)であった。國際協(xié)調(diào)外交を志向した日本人外交官は、なぜ中國との紛爭を外交的に解決することができなかったのか。陸軍に代表される武官エリートの暴走を止められず、日本の有史以來最大の慘禍を招いてしまったのか。上海で活躍した代表的な日本人外交官の足跡を丹念にたどり、戦前の対中外交の失敗の背景と要因の分析は、今後の日中関係を考える上での教訓(xùn)となる。

◆「軍刀」の前に沈黙を余儀なくされた

本書は、上海で活躍した松岡洋右、有田八郎、重光葵ら日本人外交官11人の足跡をたどり、「軍刀の前に沈黙を余儀なくされたのが政治家及び外交官の現(xiàn)実であった」と分析する。外務(wù)省と陸軍の総合力の差、外務(wù)省內(nèi)部で積極的な大陸政策を目指す勢力の伸長、対中強(qiáng)硬策を支持する世論などを“外交無力”の要因として指摘する。陸軍は「支那通」を日本のあらゆる組織の中で最も多く養(yǎng)成し、中國大陸に外務(wù)省が及びもつかない広範(fàn)な情報網(wǎng)をめぐらしたという。

中國との関係では、辛亥革命や民族運(yùn)動に共感し、アジアの友邦として共に立ち上がろうとする気運(yùn)が日本側(cè)の一部にあった。しかし、日露戦爭の勝利により得た満州における「特殊権益」を保護(hù)しようとする機(jī)運(yùn)の中で、近代化に遅れ、停滯と混亂、內(nèi)戦に明け暮れる中國に対する侮蔑意識と、日貨排斥や抗日?排日運(yùn)動 の「暴慢無禮」な行動に対して、武力をもって日本の考える「東亜新秩序」建設(shè)に協(xié)力させるしかないとの考えが官民を問わず広く覆った。その結(jié)果、中國で高まりつつあった民族統(tǒng)一と半植民地打破という歴史の大きな流れの方向を見誤ってしまい、それとの「協(xié)調(diào)」ではなく「対決」の道を選択してしまった。

最終的には中國問題を巡って米國と決定的に対立し、明治以降、先人が営々として築き上げた蓄積を灰燼に帰すという近代日本外交にとって取り返しの付かない致命的な國策の誤りを犯すことになったと分析する。その上で「日本側(cè)の主観的な理想や正義を一方的に中國に投影し、期待した反応が得られないと、今度は幻滅と失望の感情を抱き、最後は実力行使によって懸案を一気に処理しようとエスカレートしてしまった」と結(jié)論づける。この中國との距離感の取り方、換言すれば「他者」認(rèn)識というのは、隣國である日本が対中関係を考える上で、現(xiàn)在にも通じる命題だと問題提起する。

ソビエト連邦のスパイゾルゲ事件に関わった尾崎秀実、西安事件をスクープした開明派ジャーナリストの松本重治など上海で活動した日本人に関する詳細(xì)なエピソードも興味深い。

中國認(rèn)識で大切なことは、観念的に中國を観ることではなく、機(jī)上の空論を排した現(xiàn)実に即して中國を理解すること、そして、中國共産黨が支配する「中華人民共和國」の現(xiàn)體制と「中國人一般」を同一視しないことが肝要だとの杉本信行?元上海総領(lǐng)事(故人)の言葉を紹介している。

◆共通利益に根ざした互恵関係を

現(xiàn)代の日中関係について、著者は「特に経済面、人物交流面での関係の重要性が戦後かつてない規(guī)模で拡大している中、好むと好まざるとに拘わらず、日中経済関係は、「運(yùn)命共同體」となっている。隣國にある14億の巨大市場をどう活用できるかは、今後の日本経済にとり死活的重要性を持つ」と主張?!钢袊U済は、評論家的、第三者的に好悪の観點(diǎn)から論じることのできる対象ではなく、その動向が日本経済に直接影響を與える存在になっているという現(xiàn)実を認(rèn)識する必要がある」と言う。また、「中國にとっても隣國の1億3千萬人近くの人口を有する経済?技術(shù)大國、そして課題先進(jìn)國である日本を無祝することは不可能である」と指摘。このような両國関係の現(xiàn)在を最も感じるのが、4萬5千名の登録在留邦人と1萬拠點(diǎn)を越える日系企業(yè)が集積し、日本の在外公館が世界各地で発給するビザ件數(shù)の3分の1が集中する総領(lǐng)事館のある上海という街であると力説する。

「日中関係は、引っ越しのできない重要で影響力のある隣人同士であり、共通利益に根ざした経済的WIN?WINの相互互恵の戦略的関係を構(gòu)築していくべきだ」というのが、本書をつらぬく通奏低音。経済的には 「中國の発展は日本の発展、日本の発展は中國の発展」という視點(diǎn)が重要である。両國の國民感情が日中関係を左右する不安定な関係から、共通利益に根ざした冷靜で戦略的な互恵関係を推進(jìn)すべきだとの主張は、長年の日中外交に攜わってきたベテラン外交官ならではであろう。中國に「今後如何に責(zé)任ある大國として振る舞う意思と衿持があるかが國際社會から厳しく問われることとなろう」と釘をさすことも忘れない。

◆中國共産黨も「世論外交」を重視

昨今、ソフト?パワー、パブリック?デプロマシー(対市民外交)への関心が世界的に高まっている。著者によれば、インターネットやスマートフォンが普及する中、また、中國市民の権利意識が高まる中で、中國共産黨といえども世論への配慮や働きかけという広報マインドなしでは政策の円滑な遂行が達(dá)成しにくくなっている。黨獨(dú)裁の體制であるが故に、中國共産黨は「世論」というものの動向を注意深く見ながら統(tǒng)治していることがうかがえるという。

著者によると、上海地域のビジネスマンの感覚は、シンガポールや香港の実業(yè)家と本質(zhì)的に差がない。電子商取引やレンタル自転車、そしてネットを利用したビッグデータの蓄積などを例に、「後発國の優(yōu)位性」を活用して世界の最先端に躍り上がったと分析した?!溉毡救摔现袊螇浠蜃苑证且姢皮撙毪趣いχ呐Δ虻·盲皮い毪韦扦悉胜い?。食わず嫌いではなく、自分の目で中國を見てほしい」と呼び掛けている。

◆ダイナミックで大きな変化見極めを

何千年も続いた中國社會には、社會や制度に対する信頼度の低さといった本質(zhì)的に変わらない部分もある。一方で、インフラ建設(shè)や、ビッグデータの活用を含めたインターネットによる経済?社會構(gòu)造の転換など日本國內(nèi)のスピード感では信じがたい速度で変化している部分もある。中國への嫌悪感から、この國の社會で現(xiàn)在起きているダイナミックで大きな変化を真剣に見つめようとする関心を失ってしまうと、その方向性を正しく理解できなくなってしまう?!溉毡兢摔?、現(xiàn)在の閉塞狀況を打破するために、再び新たな開國とチャレンジ精神が求められているのではないだろうか」というのが、著者の痛切な訴えだ。

全體を通じて著者の外交官としての真摯な取り組みと正義感、そして哀歓が伝わり、共感する部分が多かった。今後も、まだまだ不安定な日中間の「架け橋」として奮闘してもらいたい。(八牧浩行

<『対中外交の蹉跌―上海と日本人外交官』(日本僑報社刊、3600円=稅別)>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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