<コラム>習(xí)近平総書記を「核心」と表現(xiàn)した中國共産黨公報(bào)のインパクト(2)

如月隼人    2016年10月31日(月) 15時(shí)20分

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前回は、「核心」という言葉が、同じ漢字を用いていても、日本語と中國語ではニュアンスが違うということをご説明した。やっかいなのは、中日辭典を調(diào)べても、言葉のニュアンスの差までは分からないことだ。寫真は第18期中央委員會第6回全體會議。

前回は、「核心」という言葉が、同じ漢字を用いていても、日本語と中國語ではニュアンスが違うということをご説明した。やっかいなのは、中日辭典を調(diào)べても、言葉のニュアンスの差までは分からないことだ。そこで、少々長くなってしまうが、私がどうして違いに気づいたかも、ご紹介しておこう。きっかけは、中國人の音楽學(xué)者と、民族音楽におけるメロディー分析の手法について議論をしたことだった。

世界各地にさまざまな民族音楽が伝わっているわけだが、多くの場合、1オクターブ內(nèi)で言えば「もっとも重要な音」が1つ存在し、その他の音は、その「重要な音」との関係性において、“役割”を持ってくる場合が多い。抽象的な説明で恐縮だが「1オクターブの中に、最重要な音は1つ」と理解していただきたい。

西洋の音楽もそうだ。中國音楽の事情も、似ている。ところが日本の伝統(tǒng)音楽では、1オクターブ內(nèi)に旋律の「大切なよりどころ」として同じように機(jī)能する音が複數(shù)あるとみなした方がよい場合がある。

このことを初めてはっきりと提唱したのは、音楽學(xué)者の小泉文夫氏(1927?1983)だった。小泉氏は、この音を「核音」と名づけた。

私は日本における「核音理論」を相手に伝えたかったのだが、話がどうも噛みあわない。30分以上もかけて説明しただろうか。彼女が「日本人と中國人では『核』という言葉に対するイメージが違うようだ」と言い出した。つまり彼女は「1つのメロディーに『核』と呼ばれる音が複數(shù)存在する」ということに、納得がいかなかったというのだ。

「核音」が、中國語でいう「核の音」ではなく、「旋律において、極めて重要な音」というのなら、問題なく理解できるとのことだった。

それ以來、日本語における「核」ということばの用法に注意するようになり、「かなり重要」程度のニュアンスで使われる場合が多いことに気づいた。

たとえば、舊運(yùn)輸?。ìF(xiàn)國土交通省)が定めた「中核國際港灣」だ?!钢袠袊H港灣の機(jī)能を補(bǔ)完するとともに、地域のコンテナ輸送に対応した國際海上コンテナターミナルを有する港灣」とされており、全國に10カ所以上ある。中國人の語感ならば、「核」の文字は、まず使わないだろう。

話を戻そう。政治における発表で、最も注目すべきなのは、言葉使い、特にその変化だ。中國にかぎったことではないのだが、中國の場合には、ごく限られた情報(bào)から、內(nèi)部の動きを読み取る必要があるので「言葉使いの変化」には特に注意せねばならないことになる。

また、発表する側(cè)も、言葉使いに対する反応を十分に考慮しているはずだ。とすればなおさら、「言葉使いの変化」は重要な意味を持つことになる。

そして、胡錦濤政権時(shí)代に使用が下火になった「核心」を再び使ったということは、「集団指導(dǎo)體制からは決別。習(xí)近平総書記こそが、唯一無二の権力者」という、相當(dāng)に強(qiáng)い意志を示したことに、ほかならない。

もちろん、「核心」の言葉を使ったことが、権力の一點(diǎn)集中が著々と進(jìn)行していることを示すとはかぎらない。

中國経済の先行きは不透明だ。1990年代に改革開放を本格化させて以來、中國共産黨は自國民に「豊かになる」という希望を持たせることで、政権を安泰にしてきた。その手法はすでに、使いにくい狀態(tài)だ。

共産黨は外交においても、臺灣や香港に対しても経済的恩恵を與えて「なつかせる」手法を用いた。その手法も、これまでのようには通用しづらくなってきた。したがって、共産黨総書記を頂點(diǎn)とする権力のピラミッドを維持する環(huán)境は、厳しくなってきたと言わざるをえない。

習(xí)総書記が、政権の安定維持について強(qiáng)い危機(jī)感を持っていることは間違いない。だからこそ、「自らが唯一無二の中心人物」と強(qiáng)調(diào)することが必要と判斷した。つまり、共産黨が公式発表で「習(xí)近平同志を核心とする黨中央」との表現(xiàn)を用いたことは、習(xí)総書記の「そうでなければならない」との強(qiáng)い決意を示したことであり、「現(xiàn)実がどうであるかは別の話」と受け止めねばならない。

さらに論じれば、「核心」という強(qiáng)いニュアンスの言葉を使った最大のインパクトは、習(xí)近平総書記がこの言葉を「使わねばならない狀況にある」と判斷したことにある。(10月31日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)したが、何を考えたか北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿ァH毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ?!钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?!钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

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